新校長 新任挨拶


 春、素晴らしい季節の到来です。水が温み、草木が芽吹き、虫も動物も長い冬の眠りから覚めて生き生きと活動しだしました。校庭の桜が満開となった4月8日には、一泉同窓会会長蚊谷八郎様のご臨席を賜り入学式を行いました。360人の新入生、714人の在校生、そして107人の教職員と共に心新たに新年度を迎えることができました。これも、同窓会のご支援があればこそと心よりお礼申し上げます。
 本校は今年、創立115年を数えることとなりました。校名を石川県立金沢泉丘高校と改めてからは60年目となります。一中・泉丘、即ち「一泉」の名の下に集われる同窓の方々は優に3万5千人を超えております。その節目の年に母校の校長として赴任できましたことは、唯々感謝の思いであり、責任の重さを痛感いたしております。
 ところで、本校がこれまで歩んできた歴史を顧みますと、その時々により良い学校でありたい、誇れるものがある高校をつくりたいという先輩たちの意気込みや先生方の思いが伝わってきます。中でも新制高校直後の約10年、本校の教育目標を「心身一如」と定めた泉丘高校3代目校長・山本外吉先生の次のことばが印象的です。「伝統の命は創造を繰り返して更新することで持続する。創造は過去との激しい絶縁に、時には伝統とも対決せんとする心理的転機に成立する」。旧制中学の伝統に新制高校の新たな息吹をという山本先生の思いの一端がうかがわれます。
 ある本に「老幹新枝」ということばが紹介されていました。それは亭々として高くそびえる大樹のたおやかな幹に、また新しい枝が伸びていく様を表しておりますが、山本先生は、現状に慣れきって反省を忘れ、新しい刺激を拒否していると、新しい枝葉が生まれるどころか、すでに繁っている枝葉も枯れてしまうと、我々職員や生徒諸君に警告されたのだと思います。
 「より善くありたい」との思いは、人間が生来身につけている思いでありますが、常に高い志を持ち、自らの可能性に挑戦し続けてきたことが、今日の「伝統」と呼ばれる本校の「魅力」を作ってきたのだと思います。伝統校に学ぶことに甘んずることなく「心身一如」の校是のもと、文武両道を貫き、全国の伝統校を席巻、凌駕する新たな校風を築きたいものです。
 校庭の 桜の如く 大樹たれ
 野球部の甲子園出場を誰よりも願い、後輩たちにエールを送り続けながら昨平成19年8月23日に帰らぬ人となった山本道生さん(一中54期)の句です。一中・泉丘をさらなる大樹へ、との思いをお伝えし、新任のごあいさつといたします。

新校長 山下 一夫

 

平成20年4月吉日